2年基礎ゼミナール

グループ研究第一次素案に先輩から一言

Friday, 08-Oct-99 13:57:51



 いつも私のホームページをチェックしてくださっているシンガポール在住の井上貴之さん(JVC ASIA LOGISTICS CENTRE 勤務)から、業務で多忙な中、2年基礎ゼミの後輩諸君のグループ研究に対して、先輩としてのアドバイスを送っていただきました。ほんとうにありがとうございます。
 後輩のゼミ生諸君を温かく、そして厳しく見守ってくださるOBに心から感謝します。
 ゼミ生も、Eメールで海を越えて井上さんと意見を交わしています。社会の第一線で活躍する先輩から指導をうけること、また先輩と交流できることの素晴らしさを感じます。本当にありがとうございます。

第一次素案に戻る。

 二年基礎ゼミでの研究論文は、私にとってもはじめての論文作成作業(といってもあまり誉められた作り方をしたわけではありませんが)であり、ホームページ゙で拝見させていただいた後輩たちの後期グループ研究の素案も感慨深く読ませていただきました。私たちの世代は「商学部の学生=経済学や商学に関することを論文のテーマとする」というある種の呪縛のようなものがあり、これから逸脱することはすなわち「自ら選んだ学問を否定することである」といった感があったような気がします。もちろん3年次以降のゼミは当然ながら「経営史」という学問を学んだ上でこれに沿った論文テーマを選んだつもりですが。もちろん、今回の2年次生の素案について私がとやかくいえる立場ではありませんし、先生がすでにご指摘になっているとは思いますが老婆心ながら各班の方々の素案に一言。
///////井上貴之  Takashi Inoue ////////
///// JVC ASIA LOGISTICS CENTRE/////
// e-mail Office inoue@jvctuas.com.sg ///
//      Home taka1@sg2.so-net.com //

1班の方へ

 我々の学生時代にはある種タブーとされていた領域について堂々と論じていこうとされるその勇気に感心いたします。ピルについては、私も知識がほとんどなく、単に「避妊薬」としての効果があるということくらいしか知りません。しかしながら、「なぜ今日日本で解禁されることになったのか」ということですが、製薬会社から厚生省の薬事審議会(だったとおもいますが)への医薬品としての審査請求はかなり前から行われていたと記憶しております。これが「なぜ今になって許可されたか」という疑問は当然かもしれません。
 さて、この素案の第二段落以降、あなた方は何を論じたいのでしょうか。あくまで人間の倫理観でしょうか。あなた方は商学部の学生として1年半は経済・商学の学問を勉強されたはずです。わざわざ論文を作成するために「倫理学」をまた勉強されるおつもりなのでしょうか。もったいないですね。せっかくの1年半の学問を生かしてみませんか。
 製薬会社がピルを日本で製造販売したいのは、あくまでも彼らの経済活動にほかなりません。ピルを製造販売することにより、多額の利益をあげることを目的としているはずです。薬害問題でいろいろと製薬会社の「社会性」や「倫理観」などが問題になりましたが、会社としては、「利益をあげて株主に配当すること」が目的であるといえるでしょう。そのあたりからこの論題を考えると製薬会社経営に対する製薬会社の本音が見えて面白い論文になろうかと思います。当然副題は、「ピルについての正しい認識を求めて」ではなく、「製薬会社の利益追求、ピルの製造販売を例として」といった形に変わるのかもしれませんが。

1班第一次素案に戻る。

2班の方へ
 福岡という地理条件を考えると確かに朝鮮問題は東京で考えるよりもより身近な問題だと思います。こちらでも連日北朝鮮の話題はニュースになっています。
 まず、「現在の北朝鮮は戦時中の日本と類似しているともいわれている」ことから「比較」することにより「今後の動きを予想してみたい」というまさに政治学の世界の内容ですね。
 単純に「戦時中の日本」といわれるものをぶつけると確かに「天皇絶対の社会」であるかのような感がありますので、「金正日絶対の社会」が似ていると感じるかも知れません。しかしながら、日本は「立憲君主国」であり、「天皇は憲法の下に立つ」ことが明治憲法の中にうたわれています。まずは明治憲法から勉強する必要がありますね。また、戦時中が軍部の独走によりそのような(つまりあたかも天皇中心のような)社会を作っていたとしても、そういう事態になった経緯も考える必要があります。これは政治学の分野ですね。さらに戦前・戦中を考えるときにはずせない植民地政策、つまり朝鮮半島の支配については、地政学の見地からこれを考えなければなりません。単純に「列強が植民地を持っていたから日本もそうした」とかいう子供のような論理はそこにはありません。当時の社会情勢・世界情勢を含めて考える必要があります。
 さて、これだけの新しい分野を勉強したとして、最後に「彼の政治・政策の心理」を分析されるとのこと、心理学まで登場ですね。あなた方の貪欲な学問意欲に敬意を表します。そこで提案ですが、1班の方同様、一年半の勉強を生かしてみませんか。北朝鮮が今のような状態になった原因には経済を発展させることに失敗したからにほかなりません。これが農業政策での失敗なのか工業政策の失敗なのかはわかりませんが、経済学で学んだ「社会が発展する条件」というようなものと北朝鮮の社会経済活動を比較検討するといいのかもしれませんね。これを論点とし、最終的に北朝鮮がどうすれば世界国家の一員として認知され、国の経済が発展していくのか、ということを考えてみては如何でしょうか。
2班第一次素案に戻る。

3班の方へ 

 日本国民の4人に1人が持っているという「携帯電話」。ここシンガポールでは、国民全員が持っているのではないかと思うくらいに普及しています。町でご老体が大声で「携帯電話」で話をしているのをよく見かけます。
 あなた方が研究しようとしているテーマは、通信事業にかかわる会社がマーケットリサーチしている内容ですね。そのようなリサーチを元に新しい「携帯電話」が作られ、「新しいサービス」ができるのでしょう。弊社も一部PHSやモバイル機器を製造・販売しておりますが、私がまだ本社にいるときに時々、アンケートに来ていた内容の一部と同じです(内容はもっと細かかったと記憶しています)。
 さて、これらを調べ上げ、「利用者獲得のためにはどのようなサービスが有効であるか」を結論づけて、どうするのでしょうか。やはり商学部の学生ですからもう一歩踏み出してみませんか。「利用者獲得」を単純に目指す会社はありません。ユーザーを増やしても利益が上がらなければ意味はありません。ただ、そのときは利益が上がらなくとも自社製品の規格を統一の規格として認めさせ、それにより最終的に利益を得ようとする会社もあるでしょう。このように、会社の戦略によっていろいろな形態があろうかと考えられます。そういうことを考えて各携帯電話会社の経営戦略を考えるととても意義のある論文になろうかと思います。
 最後の「利用者のモラル」についてはどのような「モラル」が求められているのでしょうか。余談ですが、一口に「公共性」から「モラル」と叫んでも、ここシンガポールでは会社で就業時間内であろうと会議中であろうと携帯電話が鳴ればそれに出て話をしてもマナー違反とはいえません。電車内でもそうです。日本だと関西地域以外は電車内で話すのはマナー違反とされていますよね。
 このように「公共性」から「モラル」とか「マナー」とかを考えるのは非常に難しいと思います。これも同じように考えてみませんか。ごく一般的に言われている「モラル」とか「マナー」を守るための「新しい付加機能」がついた機種が次々と発売されていますよね。これはあくまで自社製品を売るため、すなわち利益追求のためです。このあたりを絡めて考えてみては如何でしょうか。

3班第一次素案に戻る。

4班の方へ 

 遺伝子の構造が判って来るにつれ、新しい治療法やいままで原因がわからなかった病気に対する対処法などがまさに日進月歩の勢いで研究が進んでいます。これら「神の領域」といわれる部分にまで人間が手を入れてもいいのか、という議論は以前に聞いたことがあります。さて、素案を読ませていただくと、どうも倫理論や社会問題に重点がおかれ、議論を進められるように思われます。どうも論点がこの素案を読むだけでは良くわかりません。単に私がこのような問題に興味がないからかもしれませんが。
 先進医療の「有効性」から「それを取り巻く問題点」、「克服すべき課題」、どれをとってもとても大事なことだと思います。医療は江戸時代には「医は仁術」といわれたように単純に表面に現象として捉えられるものを治療すればよいというような単純なものではありません。
 商学部の学生としてはこの問題をどのように扱うのが正しいのでしょうか。今野先生が言われているように、「社会的視点」からこれを論じていくべきでしょうね。2,3種類の事例について深く研究し、これからなにか導きだせればよいのではないでしょうか(どうも上手くアドバイスできませんが)。

4班第一次素案に戻る。

5班の方へ

 福岡の町もここ数年でその様相を変え、久しぶりに歩くと故郷に帰ってきた感じがしなくなりました。あなた方が選ばれたテーマはとても興味深い内容です。
 各デパート間の競争も厳しいようで、福岡玉屋の閉鎖や、天神岩田屋が店舗を閉鎖する、というような大変な問題になっているようですね。老舗が新規参入デパートに対抗できなかったのは何故でしょうか。経営者はどのような考えの元に対抗しようとしていたのでしょうか。とても興味深い内容です。ぜひ、見事な論文を完成させてください。期待しています。
 ただ、素案を読んでいると研究しようとしている内容が多岐にわたり、論点がずれるような気がします。もちろん、グループ研究ですから、各人が責任を持って研究することが前提ですのでこれくらいこなせるかもしれません。でも、もう少し調査内容を絞る必要があるのでは、と心配しています。
5班第一次素案に戻る。


 4班の方だけ、今ひとつどのようにアドバイスをすればいいのか考えがまとまりませんでした。申し訳ありません。もちろん、各班の方々の反論、意見もあろうかと思います。私のメールアドレスを教えていただいて結構です。いつでも返事がかける状況にはありませんが、可能な限り協力しますし、それが失礼とは思いながらもこの文書を出した私の責任だとも思っています。 以上


OB・OGのページへ。